先日、新聞にある獣医師さんの記事が載っていました。
この獣医師さんは動物の法医学の先生です。
各都道府県から持ち込まれた動物の検視を行っておられます。
なかには虐待の恐れや不審死の遺体もあり、検視においてその遺体が病死なのか、
虐待などの他殺体なのかを検証しておられます。
警視庁の調べでは 動物愛護法違反(遺棄、虐待行為)は増加傾向にあり
2020年では 102件もの解剖依頼があり、動物種としては、猫が多く、
ネグレクトによるもの、薬物使用などが目立ったようです。
先生はアメリカなどの保護施設などで動物の健康管理について学習され、
そこで飼い主のいない動物たちが幸せをつかむための「架け橋」になれるような
獣医師になりたい、と思われたそうです。
先生は今の日本の動物福祉の現状について
「動物福祉の概念を正確に普及させることが必要。
科学的知見をもとに動物たちの苦痛をなるべく取り除いてあげることの必要性。
愛護活動だけでは動物を幸せにはできない。
客観的で科学的なアプローチが大切。」
とおっしゃっています。
そして そのために「私たちのような獣医師ができる事はたくさんある」と
まとめていらっしゃいました。
動物愛護法が 改正に至った主な理由の一つが 遺棄、虐待です。
ただ、実際に事例として報告されているのは氷山の一角にしかすぎません。
とくに 犬・猫以外の 鳥、小動物などの場合は 全く表面化しないことが
多いばかりか、遺棄に関してはそれが「自由になれる」と思っている
人もあるようです。(信じにくい事実ですが)
「動物は戸外で自由に暮らせたら幸せ」
だから 飼えなくなった鳥や、亀などを 戸外に遺棄することを正当化して
考えている人もいるのです。
ペットの動物を戸外に遺棄することは その動物にとっても不幸なことです。
人に飼育されていた動物は戸外で一人で生きて行くすべを知りません。
食べ物の探し方も、安心して眠れる場所を見つけることも知りません。
天敵に対する脅威も、風雨の避け方も知りません。
そういう動物が突然、戸外に放たれること、それは命にかかわることなのです。
時には環境に順調して生き抜くことのできたものもありますが、
そういう動物は今度は、野生で暮らしてきた在来種にとっての脅威となり
本来の生態系の破壊にもつながっていくということもあるのです。
動物をペットとして、飼うことは決して悪いことではありません。
でも 「ペットショップで見てかわいかった」
「TVの番組などでみて飼いたいと思った」
「子供が飼いたいといった」
非常に単純な理由で飼う人がいます。
価格が安いこと、飼いやすそう、なども理由になります。
今般、コロナ下でのホームワークなど在宅が増えたこともペットの飼育数増加に
影響しています。
しかし
「かみつくようになった」「なつかない」「大きな声で騒がしい」
「TVのような芸(おしゃべり)をしない」「子供が世話をしない」
結果 手放しを考える人もいるようです。
また コロナが落ち着いてホームワークがなくなったことで世話ができなくなると
家庭環境の変化を理由に、飼えなくなる人も出てくる可能性があると思われます。
ペットはおもちゃではありません。
一つの大切な命です。
命である以上、個性も意思もあります。
飼い主の望まない行為をすることも多々あると思います。
でも、その行為にも理由が必ずあるはずです。
その行為を責めるよりも理由を考えていただきたいと思います。
彼らも私たちと同じに痛みや苦痛もストレスも感じるのですから。
そもそも 動物を飼う前に「その命に向き合い、その一生に責任を持つ覚悟」
をしてほしいと思います。
そのために まず飼いたい動物の事を真剣に調べてほしいと思います。
その動物がどういう生き方をし、何を食べ、何ができて何ができないのか。
TVやメディアの情報を鵜吞みにしないで その動物が本当に地震の飼いたいペットなのかまた、自身が責任を持って世話をできるかどうか、考えてください。
ご家族はすべて飼うことに同意されていますか?
誰か反対する方がいるのなら まずその人とよく話し合ってください。
もしも、飼いきれない事情が起こった場合 相談できる人や場所も見つけておいて
ください。
難しい場合は「飼わない」という選択肢も考えていただければと思います。
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