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執筆者の写真Iriyama Satoruko

神戸   ツバメのおはなし



春、ツバメたちが渡ってきて日本で繁殖活動を開始します。

その渡航距離は4000キロにも及ぶといわれ、東南アジア方向から数回の休憩を

はさみながら単独で海を渡ってきます。

多くの渡り鳥が群れでの移動をするのが普通ですが単独での渡りをするツバメは

珍しい存在といえます。

ツバメが日本を目指すのは 温暖で餌の豊富な環境での安心できる地域での

繁殖活動のためでその多くは前年繁殖した場所を目指して帰ってきます。

前の世代が繁殖に成功した場所、親が育ててくれた場所での安心できる環境、

それを信じて戻ってくるのです。

昔から多くの日本人はツバメを大切な益鳥と考えてきました。

その捕虫能力で多くの害虫を排除してくれるツバメ、人の出入りの多い店を特に選んで

営巣することなどから商売繁盛のシンボルとも言われてきました。

ただ、その一方で巣のある場所は糞などの汚染もあったりと、嫌がる声もあるものの

多くの人はこの小さな訪問者の来訪を楽しんでいます。


しかし、今回そのツバメたちについて非常に悲しいことがありました。


これはうちの地元、神戸のある繁殖地の話です。

そこでは毎年何組かのカップルが巣を作り繁殖活動をしていました、

駅へとつながる通路にもなっていたので人通りも多々ありましたが 近隣の

飲食店の方なども毎年の営巣を楽しみに暖かく見守っていました。

今年もツバメたちは3月末ごろから無事に飛来し、4月に入るころには新しいカップルが

巣作りを開始していました。

昨年の古い巣を使うものもあれば新しい場所に作り直すカップルもいて そこでは数組が

にぎやかに巣作りをしていました。

4月中には巣も完成し、抱卵に入るカップルもあったと思われます。

しかしGWをまじかに控えた4月最終週の水曜日悲劇が起こりました。


突然 害獣駆除の業者が現れ巣をすべて撤去、その上2度とそこへ入れないように

ネットがけまでしてしまったのです。

巣を撤去された親鳥たちは何とか巣に戻ろうとネットにしがみついたりしていて、

中には餌をくわえた親鳥もいたそうで、観察者の話ではヒナがいた可能性が高いと

いわれています。

(営巣活動に入る時期、状況を考えてもその可能性は高いと考えられます)

ここでの営巣活動はすでに10数年も続いていましたし、ツバメの子育てを楽しみに

見守る方も多くいました。

テナントを構える飲食店の方もいつも大切に観察していたそうです。

あまりにも突然の暴挙に見守ってきたオーナーさん、観察してきた愛鳥家さんも

抗議しましたが 一切受け入れてもらえることもなく、作業は終わりました。


そこに至る原因としては 該当箇所に店舗を構えるオーナーよりの強い要望であり、

テナント会議で決定したという事ですが詳細は不明で、ほぼ独断で作業されたそうです。

また この場所以外への巣作りなどについても見つけ次第すぐ撤去する契約に

なっているという話でした。


鳥獣保護管理法において、すでにヒナのいる巣のや、抱卵中の巣の撤去は禁じられており、自治体に無断で撤去した場合 1年以内の懲役もしくは100万円以下の罰金刑に処せられる

場合もあるといいます。

今回の事例は完全に管理法違反と思われますが、自治体への連絡相談があったのかは

全く不明です。

本来、法規違反での告発などもあり得そうですが 実際には「証拠」がないので

目をつぶるしかありませんでした。

(例えば実際に削除された巣内の状況写真、観察者の証言や証拠写真、

 撤去時の映像、などが必要だそうです)


今、営巣地を追われたツバメたちは新たに近隣の店舗

(当該の連絡通路に店舗を構える場所も含む)の軒先などに営巣しています。

ツバメを愛するオーナーさんたちは個別に守る事とし、ふん除けの容器なども個々に

設置するなどの活動を始めました。

私たちもこの活動を応援していきたいと思っています、

そして2度とこういう卑劣な行為が行われるようなことがないようにと強く願います。



日本にはツバメをはじめ多くの野鳥たちが繁殖活動などのために渡ってきます。

彼らは日本の環境を選んで遠い道のりを渡ってくるのです。

この後も彼らが安心して渡って来られるように、そして安全に暮らし帰っていける環境を

大切にしたいと思います。

どうかこれからも他の地域の方々も小さな命の営みを大切に見守っていける

社会であることを切に願います。


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