横浜小鳥の病院の院長・海老沢先生が定期的に「質疑応答ライブ」を発信されています。
獣医師さんだけに的確で丁寧なお話が伺え、勉強になるので極力参加するように
心がけています。(忙しい時は後日配信で見直させていただきます)
毎回のテーマも素晴らしいのですが その後、質疑応答の時間があり テーマ以外の
質問にも丁寧に返答いただき、とても勉強になります。
今回のテーマは「共同育雛」でした。
(ちなみに「共同育雛」という呼び名を命名したのも
海老沢先生だそうです・・・、知らなかった)
「共同育雛」については 以前、認定NPO法人TSUBASAのセミナーにおいても
いろいろ勉強させていただきました。
その時も実際の事例の紹介もあり、実際に共同育雛をしているブリーダーさんより、
共同育雛の大切さやを学意義をせていただきました。
今回のライブでは、海老沢先生がいろいろご自身で研究されたデータなども含め獣医さんの立場からも細かくご教授いただきました。
「共同育雛」というのは 飼い鳥の雛の育て方の一つです。
一般的に 繁殖目的で巣引きする場合、
・自然育雛
・人工育雛
・共同育雛
の3つのやり方があります。
「自然育雛」とは すべて鳥任せ、鳥自身が自分で繁殖し、人は一切介入しない方法。
「人工育雛」とは 雛の育児を親任せにせず(時には卵の時点から)
親から取り上げて人の手で育てたり、卵を孵卵器で羽化させて育てる方法。
「共同育雛」とは 基本的に親に育雛させながら常に人が触れたり、観察したりして
人なれしやすい雛を育てる方法。
今 一番普通に考えられている、多くのブリーダーさんが行っていて多くのショップで
取り扱われている雛たちの飼育方法は「人工育雛」です。
「人工育雛」で飼育すると雛はほとんど鳥(親ももちろん)を知らずに育ちます。
はじめて見るのも触れるのも人ですから 人を頼り人を信じて育ちます。
特に卵から孵卵器で育てられた場合、一度も親鳥と触れ合うこともなく成長します。
「雛から差し餌で育てないとなつかない」多くのショップでうかがいます。
親から離し、人の手で育てることで「手乗り鳥」が育つ、「一人餌になった鳥」は
これまでは、人になつかない、人になつき、飼いやすい鳥にするためには
「人工育雛」が一番いい方法だといわれてきました。
ただ、生まれて間もない雛を人の手で育てるためにはリスクも多くなります。
保温、成長に応じた適切な給餌を与えないといけませんので 飼育者の負担は
多くなります。
また知識や経験も必要ですし、雛の時は抵抗力も少ないので感染症対策も必須になります。
鳥の立場から考えると、親鳥にとっても雛にとってもストレスが生じます。
幼いうちに親から離されることで親にも子にも分離不安があると考えられます。
対する「自然育雛」では すべてが親任せになる分、飼育者の負担はほぼありません。
雛は親から適切な温度、適切な餌を与えられ、また親からの免疫力も引き継ぐことが
できます。
ただ、巣立ちまで親のみの力で育った雛は 簡単には人になつかないことが多いです。
自分たちよりはるかに大きく見たこともない人間にすぐに懐くのは難しいかもしれません。
それでも全く懐かない、という事はなくて 周りに手乗りの鳥がいたり、
飼い主がゆっくり時間をかけて付き合うことで手乗りに育つことはあり得ることです。
しかし、鳥自身にとっては一番ストレスがなく、安心できる方法ではあるといえます。
では、「共同育雛」はどういう感じになるのか?といいますと、自然育雛と人工育雛の
中間的、いいとこどり、適な感じになるようです。
「共同育雛」では 基本的に雛を育てるのは親鳥です。
親が育て、巣立ちまで雛と離れることはありません。
違うのは 産まれた時から人が常に雛や親鳥に触れたり観察して、時には給餌を手伝ったり
健康管理をして、親と共同での子育てをする、という形です。
雛は生まれて間もないころから親とともに人の存在を意識して育ちますので、人に対する
恐怖心やストレスを感じません。
親もまた 人が触れるのを当たり前に育てていきます。
巣立ち後も親と生活するため 鳥として生きるすべ、仲間との触れ合いなど
(種特異的行動・・・動物種により特異的にする行動や所作)も
自然に学習して育ちます。
結果 人にも慣れやすく 他の鳥たちともすぐ交流できる鳥に育っていきます。
親鳥からの細菌叢(さいきんそう・・親の持つ免疫)も受け継ぎますので比較的
免疫力の強い個体になるといわれています。
ただ、現在「共同育雛」での繁殖をしているブリーダーは ほぼいない、と
海老沢先生もおっしゃっていました。
ブリーダーさんたちは まず売れる鳥を作出する必要があります。
そのためには、まず「よくなれた、手乗りの雛」を作出することを第一に考えます。
人工育雛で 人を恐れない雛を作出することが販売目的にかなうからです。
また、色や模様、羽毛変化などのある鳥を作る、ということも考えます。
そのために 特定の鳥の組み合わせなどもします。
優先されるのは「売れる」ことなので確実に多くの雛をとる必要がある、
そのために巣箱から雛をとる(時には卵をとる)・・・・すると親鳥は
新たに卵を産み足す、できるだけ多くの雛がとれる、という結果になります。
また 売れるカラー、模様などを採るために 同じような鳥との交配、
時に近親交配なども普通に行われているようです。
大型種や珍しい鳥種など、輸入が難しかったり サイテスなどの規制のある種などは
手近な個体同士の交配もするそうです。
販売目的、必ず売れる固体を作出するため、という事ですが 鳥たちにとって
決して幸せな選択ではない、と自分は思います。
実際的に日本では人工育雛がで普通ですし、新規にブリーダーになる方も基本的に
人工育雛で繁殖しています。
理由のひとつは ブリーダーとしての資格を「動物取扱業資格」として取る場合、
たいていの方がブリーダーとして営業されている方から教わっています。
これは「動物取扱業資格」が親子資格であり、親の資格を継承していく形になっている
事にも一因があるのかもしれません。
ただ、海外では「共同育雛」が推奨されているそうです。
日本でも「動物愛護法」が改訂され、犬。猫に関しては 8か月齢までは販売できない、
など規制ができました。
親と一緒に生活させることで親からいろいろ学び、社会性をみにつけるため、また
親兄弟と暮らすことでのストレス軽減なども目的とされています。
これは犬・猫に限らず人を含むすべての動物にも同じことが言えるはずです。
それなのになぜ、鳥はまだ親の給餌を受けている雛の時から、場合によっては卵から
親から離されて育てられる必要があるのか?
親や兄弟と暮らすことの大切さ、親や子供の状況などどんな動物も同じように
考えていくべきかと願っています。
(今回のブログ制作にあたり 記事の引用、紹介を海老沢先生に許可いただきました。)
5月に「雛の育て方」に関する海老沢先生のオンラインセミナーが予定されています。
関心のあるかあは是非ご視聴ください。
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